健康美ルポ

自分はこの世界で絶対生きていく再現美容を人生で追求し患者様へ恩返ししていく

化学療法による脱毛や脱毛症で悩む方々に医療用ウィッグで髪型を元に戻し、ヘアケアと社会復帰をサポートする非営利団体、 NPO法人 日本ヘアエピテーゼ協会。その活動に共感と感銘を受け、今回の「健康美」ルポは 、大阪、千葉の2サロン様で活動についてお話を伺いました。

再現美容は全て患者様から教わった。

再現美容師になったきっかけは?

3年前に叔母が白血病を患ったことがきっかけでした。見舞いに駆け付けたところ、かつて黒々と髪の毛のあった叔母が丸坊主になっていたんです。その姿を見た時、とてもお世話になった方だったので、治ってほしいという思いとともに自分に何ができるかを考え、ウィッグを思いつきました。そこでヘアエピテーゼという協会が「かつらの学校」を運営していることを知り、医療用ウィッグについて勉強しました。

医療用のウィッグとは?

患者様の元あった頭髪を再現するためのものです。もっとおしゃれに素敵に見えるようにと作られたファッションウイッグと脱毛してしまった髪を元通りに、普通に生活できるようにする医療用ウイッグとはまったく別の観点で作られるものです。美容の世界とは全く違ったものが求められます。カット1つ取っても10万円以上するウイッグをそして1年患者様が必要とされると思うと、大変なプレッシャーの中でのスタートでした。何とかしなければともがく中で、再現美容の全てを教えてくれたのは患者様でした。例えば、患者様から「もっとここを切っていいよ」と言われたんです。美容師の提案するスタイルを求めてお客様がいらっしゃる美容室なら、カットに対して何か言われるということはありませんが、元通りにして差し上げたいという気持ちがあったので、素直な姿勢で切らせていただきました。特にフェイスラインの部分はウィッグと肌の接着面を隠しつつ、同時にカットしなければいけないので、そのさじ加減が難しいですね。そのギリギリのところを患者様と信頼関係を築きながら乗り越えてきました。そうして経験を積むうちに、ウィッグならではのカットする部分が分かってきたんです。

エピテーゼは女性用ですか?

基本的に女性向けだと思います。30代、40代の母親が多いのですが、幼稚園や保育園に子供を送り迎えで髪のことを聞かれるのも、説明するのも嫌だし、そっとしておいてほしい、という気持ちもおありのようです。ウィッグを作る時は、治療によって髪が抜けおちるとストレスになるので地毛を短く切るところから制作に入ります。しかし女性1人ひとりに大変な想いがあり、それぞれにエピソードがあります。ある女性からは、カットの前にハサミを貸してほしいと言われまして、お貸ししたら、ご自身でバッサリ切ってしまわれました。それは髪がなくなることに心の整理をつけたかったんですね。またある時は家族や夫、子どもに接する際の相談もお受けすることもあります。

患者様のつらい心情を心から受け止める。再現美容の始まりは、ここから。

患者様と接する際の注意点は?

まずは初めて来店された際に、その方の状況や、病気の向き合い方を探ります。それは、病気を受け入れた方と、そうでない方がいるためです。受け入れていない方はネガティブになっていますから、とにかく好きなだけ話をして頂いています。病気を受け入れた方は、不安を抱えています。まだ治療が始まっていない状態ですので、何が起こるか不安なんですね。私が分かる範囲でお伝えし、ウィッグ制作の流れをご説明して、なるべく安心頂けるようにします。また、患者様が心を開いていただけるよう、お話を心から聞くようにしています。いつしか自分の姿勢は患者さまに認めていただけるようになりました。不安な時期に寄り添うパートナーの1人として1年間過ごして治療も終わり、元気になって自分の髪でデビューのお手伝いを終え感動の涙を流される患者様を見てこんな仕事ができて良かったと心から思います。そんな毎日が続いています。

素直かつ謙虚な姿勢で心の内に耳を傾け、寄り添うこと

今後の目標を教えてください。

東日本の支部長として、再現美容を全国に発信していこうと考えています。
ウィッグの業界自体が再現美容に目を向けられていないため、出来合いのスタイルが多く、クレームも後を絶たない状況です。最初は患者様はネガティブな心境でウィッグを着用されます。その際に、違和感のあるものをかぶるので、頭に合わないケースが多くなりがちです。それをカットで、どこまで元に近づけるかの技術が必要です。さらに再現美容師は、この人だったら任せて大丈夫か、と常に問われています。もちろんテクニックは必要ですが、それ以上に患者様を心で受け入れる人間力が求められますし、信頼関係が築けるよう、素直かつ謙虚な姿勢でいなければいけません。中には満足のいくものを得ることができず、手持ちのウィッグの修正カットを依頼される患者様もいます。そういう方が全国にいらっしゃいますので、自分はこの世界で絶対生きていく、と決めています。これを人生で追求し、再現美容を教えてくれた患者様へ、恩返ししていく。それは初心から変わりませんね。

「助けよう。すてきな髪で笑顔の暮らし」を合言葉に、抗がん剤治療・脱毛症などで悩む人々の髪ケアと社会復帰をサポートする非営利団体。
TEL 03-3440-4572
http://www.hair-epithese.com/

ウィッグカット、スタイルチェンジ、調整カット、治療前の自髪カット、治療後の自髪カットなど、料金には1年間のトータルケアが含まれています。

information 今回取材にご協力頂いたのは…

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